2010年7月28日水曜日

アメリカの大泥棒 ハリス・ムーア容疑者逮捕の話題 荒川強啓デイキャッチより

7月20日の荒川強啓 デイキャッチ ジャーナリスト中野博文さんのおはなしから。
私が放送中にとったメモなので、詳細を知りたい方はポッドキャストで確認してください。



19歳の大泥棒が捕まったことでアメリカは大騒ぎ。
その泥棒は犯行現場に裸足で侵入するので「裸足の泥棒」と呼ばれている。
施設を脱走してから数十件に渡って盗みや不法侵入を繰り返していた。
移送中に逃亡したムーア容疑者はわかっているだけで2回セスナを盗んで乗り継ぎ、カリブ海へ逃げる最中にボートのエンジンを狙撃されて逮捕された。
ムーア容疑者は幼い頃から家で虐待を受けていて、アウトロー的な人気が出ていて、映画化の話も出ている。
Facebookにファンクラブができて、登録は9万人以上いる。
母親は既に弁護士と連絡をとっていて、映画化と書籍化の話がでているという。
虐待していたのは母親なので、これ自体がまず問題ではある。
ムーア容疑者は飛行機を盗んで移動を繰り返したが、飛行機の動かし方はどこで学んだか?
これはネットでセスナの動かし方を独学で学んだらしい。
盗んだラップトップコンピュータで飛び方を学んでいて、調べていくと、過去5機のセスナ機を盗んでいた。
すべて草原などに不時着させていたという。
アメリカでは飛行機の盗難は頻発しており、2009年アメリカ議会調査局の発表によると429件の飛行機窃盗被害が報告されている。
ピークは1991年に56機盗まれており、週に1機盗まれた計算になる。
テロ事件以後、航空機の取り扱いを強化してはいるが、地方には管制塔はあってないようなものになっている。
有罪の場合、ムーア容疑者は7年から15年の禁固刑となる。
その間母親はお金持ちになっているかもしれない。
アメリカの見にくいものも含めた色々なものが縮図となっている事件だ。
アメリカでは先日はロシアのスパイの逮捕、今度は大泥棒と変なものに浮かれているなあ、というのが正直なところ。
飛行機の乗り方まで盗んだパソコンから学ぶというのはすごいですが、このムーア容疑者の人生が映画化されたりすると、ちょっと複雑な気分にはなるかと思います。

ところで、犯罪者が英雄になるというのはどういうことなのか、ということについて。
このニュースではハリス容疑者の凄さと、背景の不幸な生い立ちだけが報道されていますが、実際に「空き巣」に入られると、そうとうな恐怖とショックを受けるものです。
アニメのルパン三世の「盗み」や、江戸の石川五右衛門の「盗み」はそれらを我々が俯瞰でみているので、盗まれる相手のことなど考えませんが、盗まれる側からみれば、「ルパン参上」みたいなメモでも残してくれない限りは、わけのわからない恐怖を感じるものです。
盗まれた結果は、単に「盗まれた」という感触だけではすまないものです。

気味の悪さと恐ろしさが、必ずそこにはあるものです。
「盗み」を考えるとき、私達は何故か盗む側の課程を完璧に絵に描こうとするものですが、実際に盗まれた側には、引き出しをひたすらひっくり返された痕跡が、非常に不気味かつ恐ろしかったりするだけで、誰が、何が、何故盗まれたのか、と腹立たしくも気色の悪い感触がするものです。
また、この盗みの現場にもし立ちあってしまったりしたら?とか、また入られないか?などと気になるものです。

「盗み」の感触、エンターテイメントに毒されすぎて、勘違いしてませんか?
みんな盗む側のドキドキ、義賊の正義感、そんなものばっかり感じているようですが、「盗み」って不愉快なものですよ。不愉快が前提だから、正義の義賊が悲しくみえるのであって、義賊のかなしみがみえずに義賊の快哉ばかりをみてしまうようでは、感受性が死にかかていると心したほうがいいかもしれません。

フィクションだけにしましょうよ。泥棒礼賛。セスナ不時着で壊されたらいくらかかるか、考えましょうよ。
アメリカにこんな感想が届いてほしいなあ、と思います。