2010年7月30日金曜日

7月22日 荒川強啓デイキャッチより モナリザの謎

7月22日の荒川強啓デイキャッチ デイキャッチャーズボイス 山田五郎さんの話です。

モナリザの微笑の謎が技術的に解明された。

フランスの研究機関が蛍光X線調査をした。
この調査は絵の具を削ったりせず、絵を壁にかけたまま調査が可能。

肌の部分は1-2マイクロメートルの厚さで30回程度も塗り重ねられていた。
これのどこがニュースなのかわかりづらいかもしれない。
モナリザの謎のひとつとして、顔の輪郭をよくみてみると、輪郭の線が一切ない。
ピキッとした輪郭線はない。すべてグラデーションでつながっているから、表情が変わる。

イタリア語でスフマートという技法がある。フマートとは煙らせる、という意味で、ぼかし技法のこと。
薄く絵の具を丹念に塗って絵をつくる。
モナリザはスフマートの凄さで制作されている。

今だとエアブラシがあるが、昔は何度も塗った。油絵具だから、なんども塗るのは大変で、ダ・ヴィンチは生涯モナリザを引越し先へと持ち歩いていた。
イタリアからフランスへと彼は招かれ、フランスで亡くなったため、ルーブルにモナリザはある。

スフマートは当時の最先端の技術。油絵がそもそも先端の技術で、レオナルドが生まれる少し前に油絵がようやく歴史上にあらわれる。
この油絵が生まれることによってはじめて透明性のある塗り重ねが出来るようになった。
今あるような西洋画がそもそも出来るようになったのはこういう技術ができたから。

レオナルドは影をつけるのに、当時よく使われていた銅ではなく、二酸化マンガンを使っていることもわかっている。
芸術は精神面ばかり語られるが、科学的な技術はとても重要。
フェルメールはとても高価な群青を下地に大量に使って独特の色を出している。
藤田嗣治は「すばらしき乳白色」として知られているが、彼は硫酸バリウムと炭酸カルシウムを混ぜて塗っている。また、繊細な細い筆をつかっていることが知られていたが、詳しい調査で単に細い筆を使っているのではなく、針を筆に仕込んでくっきりとするようにしていた。
三角構図の安定感や空気遠近法(近くを暖色、遠くを寒色で描く)技法もこの時代につくられた。


山田五郎氏の「芸術は精神面だけではなく、技術も重要」という意見はとても面白いと思います。
技術が「精神」を形作る場合が多々ある、という意味もあるかもしれません。
映像・写真メディアによる「記録」も、似たような側面があるかと思います。
映像はダゲレオタイプ・カロタイプ等から→白黒写真(白黒動画)・カラー写真(カラー動画)と進んでいったのかと思うのですが、写真の色あせ方や動画のコマ送りの速度自体が、私達の歴史把握にどうしても影響を与えていると思います。
昔のコマーシャルの色あせ方や、ニュース映像を通して私達はその時代の空気感をいつの間にか作ってしまいますし、逆に、優れたモノクロ写真の現在のドキュメンタリーは存在はしていますが、歴史が進んだ場合、そのドキュメンタリーからは「時代」が落ちてしまってしまう可能性もある、と思います。歴史の記録はその時代の最先端技術でとっておくにもかかわらず、そのメディアの劣化・陳腐化が「歴史」を生んでしまうというのは、面白い視点になり得ると思います。